2008年7月27日付『点字毎日』という視覚障害者向けの新聞にアリスプロジェクトのコーチング体験会が紹介されました。
以下はその記事からの引用です。
ルポ 最前線を行くコーチング体験会
「コーチング」という言葉をご存じだろうか。 スポーツでいうトレーニングコーチのように、誰かをコーチし、また誰かのコーチを受けることで、共にその人らしい生き方を見つけていく作業のことだ。
コーチングにおけるコーチは、クライアント(依頼者)に寄り添い、話に耳を傾けるのが仕事の中心となる。
こうしたコーチングの分野で視覚障害者が活躍できる場面を増やそうと、養成プログラムを続けるグループが東京にある。
今月5日に開かれた体験会を訪ねた。(浜井 良文)
生き方をみつける手助け
視覚障害者コーチの育成を目的に活動する「アリスプロジェクト」(東京都千代田区)は、2005年4月に設立された。
プロのコーチとして活躍する男性が盲導犬のパピーウォーカーを経験して視覚障害者と出会ったのをきっかけに、視覚障害者のコーチとしての可能性に着目。
07年2月から今年2月までの1年間、電話会議システムを使った第1期の学習プログラムが7人の受講者で無事に終了した。
現在、9人が参加する第2期が進められている。
コーチという言葉の語源は「馬車」を意味する。
人を目的地まで運ぶ馬車のように、コーチはクライアントの望むところまで導き、
サボトトするのが役割だ。
その手法は、クライアントの話を聴いて共感し、「今、何を感じているの?」「本
当にやりたいことは何?」など、さまざまな角度からの投げかけを行うことが基本だ。
その結果、クライアントは自らの心の奥にある気持ちに気づき、抱えていた課題への解決方法に出会い、自信と勇気を得て具体的な行動の一歩を踏み出す。
コーチとクライアントはその過程をずっと寄り添って歩んでいくというイメージ
だ。
日ごろからコーチを受け、現在は自らもコーチになるためにプロジェクトで勉強
中という男性は、“ いろいろなコーチに、自分の話をすべて聞いてもらってドラマの主人公のようでした。 ありのままの自分になれる時間を通して「俺って、こうなんだ」と気づくことができました。 斜に構えて、一歩踏み出せなかった自分が変化していきました ”と体験談を聞かせてくれた。
日常生活へ応用も
コーチングの手法は、企業での人材育成などをはじめとしてビジネス分野で広く活用されている。
ほかに、友人や夫婦のコミュニケーションを豊かにするためや子育て、学校教育など、日常の生活で応用できる場面は多い。
東京都内でヘルスキーパーとして働く斉藤恵子さん(44、全盲)は、プロジェクト第1期で学んだ一人。
ここで身につけたスキルは患者とのコミュニケーションにも生かせると話し、「上からの指導ではなく、自分の健康について患者さん自身に気づいてもらうことができる」と手応えを感じている様子。
また、2人の息子の子育てでもコ-チングを学んだ結果、「導くという意識から、子どもたちが自分で生き方を選べばよいと気づいて楽になりました」と話している。
プロのコーチともて独立することもできる。
インタ-ネットで検索すると、多くのコーチが看板を掲げている。
国際コーチ連盟(ICF)による認定資格を持つ人が多いが、必ずしも資格が必要ではなく、クライアントから頼りにされる実力が身につけば独立可能だ。
コーチングは電話を使って行うケースも多い。
外出が困難な視覚障害者にとってハンディが少なく、プロジェエクトでは新たな職域として可能性を感じている。
何より、クライアントの話に耳を傾けることが第一の仕事であり「聞き取る力」や
「心で感じること」に適性のある視覚障害者は少なくないとみている。
そして視覚障害者のコーチには、「障害に伴う苦労や悩みを日々乗り越えている経験から、知らず知らず持っている強みを生かすことができる」との声も聞いた。
東京、大阪で体験会
東京都内で5日に行われた体験会は、8人の新たなメンバーを加えた23人が参加した。
3人1組になり、コーチ役、クライアント役、オブザーバー役をそれぞれ経験するコーチング体験がこの日のメーンイベントで、取材の一環でそれぞれ経験させてもらった。
コーチ役では、日頃のインタビューの要領で若い女性の話を聞いたが、「それはこういうことを言いたいのですね」とついついまとめの作業に入ってしまい、オブザーバー役の男性に注意を受けた。
彼女自身に気づいてもらうことこそ、コーチに求められる役割と教えられた。
